魂に火をつける「言葉」そして「語る力」

豊臣秀吉の逸話は、多く知られています。織田信長の草履を懐で温めるという話は、当時、織田家に、今で言えば、小僧のアルバイトで雇われた秀吉の最初のインパクトある行動です。


そんな、秀吉が、台風で崩壊した信長居城の石垣を通常1ヶ月かかるところ、「私なら一週間で仕上げてみせる」と豪語します。信長は、不履行切腹を条件に、その仕事を秀吉に任せます。


面白くない他の家老たちは、棟梁を呼び「絶対に7日間で終わらせるな!」と賄賂を握らせます。


秀吉は、昼夜問わずのチーム制で取り組むように指示し、早く仕事を終えたチームから褒賞額を大きくするように、仕組みを整えますが、当然、職人集団は大炎上・・・サルの出世の手段はお断りとなるのです。


それを聞きながら、静かに秀吉は言葉を放ちます。


「知っての通り、皆の衆が枕を高くして寝られるのは、信長様が強いからだ。殿は戦国の世に終止符が打てる唯一の人だ。しかし、この城の無防備さは、既に周辺諸国に知れ渡り、攻めて来るのは早くて7日後。かくて防戦むなしく尾張は終わる。皆の愛する妻子は売られ、皆は他国でこじき三昧。今俺は、死ぬ気でこの7日間に賭けている。よいか、皆は単に、石を積んでいるのではない。皆の積む石は、この尾張を守り、信長様を天下人にする石だ!」


静寂の後、一人の棟梁が進み出て仲間に向かって言う。「者ども、今日から1週間、家に帰ろうなどと思うな。夜は昼間のごとく火を焚け。尾張職人の意地を見せるのは今ぞ。われらがやらんで誰がこの国を守れようや!」かくて、7日間で城は元通りに・・・


まさに、秀吉は職人たちの魂に火をつける「言葉」を発したのです。当然、言葉は大事ですが、秀吉の「語る力」なしでは、成し得なかったことでしょう。


「語る力」とは、声の大きさや間の取り方・・・その時々の状況で変えていかねばならないでしょう。「言葉」と共に大切な要素です。


時代が変わり、こうしてネットを通じて、情報をやりとりする現在でも、いや、こんな現代だからこそ「語る力」が重要になってくるのです。


歴史に残るような語りかけはできなくても、保育園の子どもたちにとっては、先生たちの「語る力」から大きな影響を受けます。もちろん、子どもたち一人一人、時と場合によっては、語る言葉も語り方も違ってきます。これには、マニュアルなんてありませんね(笑)


子どもたちの成長を後押しする「語る力」を私たち大人は大事にしなければなりませんね。