地域のコミュニティ つづき

琵琶湖のほとりにある東近江市で、診療所の所長をする花戸貴司さんは、在宅医療を行う「まちのお医者さん」です。抱える患者さんは、一人暮らしの高齢者や認知症患者、障害を持つ方など、様々な3歳から102歳の80人だそうです。当然、医師一人の力ではまわりません。

 

そこで、花戸さんは、家族やご近所の方々、行政までも巻き込んで、患者さんをケアしていきます。花戸さんが音頭を取る地域の会合には、お巡りさんまで参加するそうです。今までの医学は、病院で患者を治す医療でしたが、これからは、地域で支える医療になっていくと彼は言います。

 

病院で生かされるのではなく、自宅で患者さんたちが、笑顔で生活している姿は、死を迎える高齢の患者さんや末期がんの患者さんにとっても、自分で選んだ生き方だからです。

 

また、在宅医療は、高齢者が「生きる」ことを子どもたちや若い世代に伝える絶好の機会だといいます。花戸さんは、患者を診る医者でありながら、地域をまるこどケアしているのです。

 

また、九州は大分県の国東(くにさき)半島にある、豊後高田市では、地方の人口減や過疎化がうたわれる中、平成28年は、転出者760人に対して、転入者が825人でした。「子どもが生まれたら豊後高田へ!」と言われるくらい、子育て支援に力を入れた行政です。今回は、市役所の子育て支援、健康推進課長さんがパネラーです。そこには、トップである市長の「市民のために、金はなくても頭を使って、考えなさい!」のリーダーシップがベースにあるようです。

 

今回は、厚生労働省の社会・援護局長やその担当者も参加しました。担当者の言葉が印象的です。「私たちは地域の皆様が、暮らしやすい環境にあるように支援をする仕事をしていますが、一番大切なのは、地域の人たちが自分で考えて、自分たちの町を作っていくことです。私たちは、そんな熱い取組みを支援することが大きな仕事であり、『こうしなさい!』と中央から示唆するのではないと思っています」

 

過去には、ふるさと創生で、トップダウン式に、各自治体にポンと1億円が支給されたことがありました。使い道の分からない自治体は、「こんなことに1億円を使ったの?」と笑えない事例がたくさん発生しました。しかし、「うちのまちでは、市民のために〇〇をやりたい。その予算として1億円かかる」というボトムアップ式でないといけません。

 

地域の活性化には、1つの答えは当てはまりません。それぞれが抱える事情が、皆違うからです。「我が町のことは、自分たちで考えよう」でも正解ですし、違う視点が必要と思えば、地域とは関係のない第3者の意見が有効になることもあります。

 

日本全国、どの都道府県でも、様々な魅力にあふれたまちづくりが、行われる・・・そんな日本に未来を子どもたちのために、私たちのためにつくっていきたいですね。