社会に開かれた「お寺」

かつて、奈良の薬師寺で、長渕剛さんなどの大物アーティストのコンサートが開かれた時に、「お寺でコンサートなんてあり!?」と衝撃を受けた記憶がありますが、今や、「お寺」で様々な取り組みが行われています。

 

その背景には、「限界宗教法人」と言われる問題があります。2040年には約33%の寺が消滅するという衝撃的なデータです。最近よく耳にする「後継者がいない寺」もそうですし、消滅してしまう可能性が高い自治体には、多くのお寺が存在しています。

 

都内のあるお寺では、学校帰りの子どもたちが次々と集まります。そこでは「お寺の学び舎(まなびや)」という無料塾を行っています。子どもたちは、めいめいにノートパソコンが置かれたテーブルにつくと、ヘッドホーンをつけて勉強を始めます。「すらら」と呼ばれる学習システムで、各自の進捗に合わせて学習に取り組めるそうです。

 

子どもたちを見守る僧侶は、「昔は地域のコミュニケーションの中心にお寺がありました。お寺本来のあるべき姿を見据えたとき、私たちに今、何ができるだろうかを考えました」そして、たどり着いたのが教育ということです。

 

ホワイトきゃんばすでは「寺子屋」という言葉が、毎日何十回も飛び交っていますが、かつて寺は、「寺子屋」に象徴されるように地域の教育・文化の拠点でもありました。この寺では、塾に入るための要件を設けず、誰もが気軽に安心して来られる居場所になっているそうです。おやつの時間もあるので、「いただきます」「ごちそうさま」などの礼儀作法も教わるとのことです。

 

また「子ども食堂」として、月2回近隣の親子連れが集まるお寺もあるそうです。地元企業から寄付された野菜を使い、主婦や大学生らのボランティアが調理を手伝います。

 

現在のお寺に対する印象は「税金を払わなくていいのに、高いお布施を払わないといけない」など、仏教の教えを伝えることなどはほとんど伝わっていません。

 

大阪の通天閣に近い浄土宗應典院(おうてんいん)という寺は、「葬式をしない寺」として有名です。住職の秋田さんは、「葬式仏教への反発ですな。人の死を食い物にしているのが我慢できなかった」と言います。

 

「寺として社会貢献せなあかん」と、社会に参加していくための「場づくり」として、演劇や講演会、映像上映などのイベントを年間100回以上行う「芸術のお寺」として知る人ぞ知る寺となったそうです。

 

静かに、仏像を見つめたり、見事な庭を堪能したりするだけでない「行動するお寺」が、これから増えていくのかもしれません。