へいわ と せんそう

8月は、子どもたちの夏休みの活動などに目がいきますが、6日の広島・9日の長崎の原爆投下の日や15日の終戦記念日と、戦争について深く考える機会でもあります。

 

「8月15日は、戦争に負けた日なのに、どうして記念日なの?」と戦後間もない頃に、ある子どもが言ったそうです。横にいた父が「それはね・・・戦争をもう二度としてはいけない日だから、記念日にしたんだよ」と答えます。子どもにとって、分かりやすい答えですね。

 

戦争の悲惨さや平和の尊さを訴える書物はたくさんありますが、子どもたちが理解しやすい本は、少ないです。今日は、文(詩人の谷川俊太郎さん)・絵(イラストレーターNoritakeさん)の「へいわ と せんそう」という絵本を読んでみます。

 

見開きに、「へいわ」のボク・ワタシ・チチ・ハハ・「せんそう」のボク・ワタシ・チチ・ハハを対比させます。最小の言葉で、モノクロのイラストだけで淡々と語られます。

 

「へいわのボク」はいつも通り。いつもと同じに立っている。

「せんそうのボク」は座りこんでしまっている。

「へいわのワタシ」は勉強をしている。これもいつも通り。

「せんそうのワタシ」は何もしていない。

「へいわのチチ」はボクと遊んでくれて、

「せんそうのチチ」は完全武装をして一人で闘っている。

 

食卓を囲む「へいわのかぞく」、食卓には誰もいない「せんそうのかぞく」

手に持っているモノだって、木や海や街だって、明らかに全然違う。

 

そして、後半は対比が「みかた」「てき」と変わっていきます。しかし、全く同じ「かお」「あさ」「あかちゃん」が描かれるのです。敵国の人の朝も、味方の朝と全く変わりないのだと。その極め付けが将来を担う「あかちゃん」の顔です。

 

モノクロのイラストの中に、唯一「せんそうのくも」が写真で登場します。原爆の「キノコ雲」です。谷川俊太郎さんが、こだわったところだそうです。

 

谷川俊太郎さんは、東京大空襲を経験し、その目で多くの焼死体を見たそうです。戦後74年が経過し、戦争を知らない世代がほとんどの今、戦争を知る谷川さんが語る内容は、説得力があるのかもしれません。

 

小学生の夏休みの自由研究に「戦争」を取り上げるのは、なかなか難しいですが、この絵本は、子どもにもわかりやすい内容になっているので、私の世代を含め戦争を知らない保護者が、子どもに教えられるきっかけになるかもしれませんね。

 

「戦争は絶対にいけないんだ!」と力を込めて訴えるのではなく、淡々とモノクロのイラストで切なく訴えるのがいいのです。