生き物の死にざま⑥ ジョロウグモ

保育園の子どもたちにとっては、「ジョロウグモ」と言えば、黄色と黒の縞模様の、その姿を簡単にイメージすることができます。9月の親子遠足のフィールドワークで、ジョロウグモを学び、触ることもできたからです。実体験は、子どもたちの思い出に深く残るのです。

 

今日は、そんな「ジョロウグモ」が主人公です。お正月を迎える虫は、真冬の寒い中でじっと暮らしていますが、ジョロウグモは、秋に卵を産むと冬を越すことなく死んでしまいます。春になると、卵から生まれた子グモたちは、枝の先に立ってお尻から長く糸を出し、まるでスパイダーマンのように、大空を移動するのです。その距離は100メートル以上だそうです。

 

クモの巣の真ん中で目立っている大きなジョロウグモは、メスです。彼女は、ずっと獲物が巣にかかるのを待ち続けます。一日何もかからないことなどざらで、長い時では、一カ月以上も何も食べずに待ち続けることもあるようです。エネルギーを節約するために、じっと動かず、孤独な人生です。

 

孤独・・・と思いきや、親子遠足のフィールドワークでも観察したように、メスのまわりに、数匹の小さなクモが見つかります。実は、このクモたちがジョロウグモのオスです。メスの胴体の大きさが3センチに対して、オスは1センチ程度です。オスたちは、子どものうちはそれぞれ小さなクモの巣を張って暮らしていますが、夏になって大人になると、メスの巣に集まり、居候するのです。

 

ついに、彼女の巣に勢いよく飛んできたトンボがかかります。糸の振動で獲物を感じた彼女は、目にもとまらぬ速さで、首尾よく獲物に襲いかかり、吐き出した糸で、トンボを動けないようにぐるぐる巻きにしました。

 

こうして獲物にありつける前に、スズメやカラスに襲われて食べられてしまうジョロウグモがほとんどですが、彼女は、おいしそうにトンボを食べています。そこへ、オスが彼女に近づいてきました。メスがエサに気を取られているうちに、交尾をすませるのです。彼女にとっては、動くものはすべて獲物でしかありません。オスにとっては、メスに不用意に近づけば食べられてしまうのです。

 

そして、彼女のお腹の中に、新しい命が宿るのです。命を宿した彼女の縞模様は、輝くように鮮やかです。そして、秋の終わりに、巣から木の幹などに移動して卵を産みます。枯れ葉などで卵を覆い隠し、力尽きた彼女は、卵を抱きかかえるように死んでいくのです。

 

クモという生き物は、人間たちからは、たいがい悪者扱いされます。人間が、小さくなって昆虫の世界に迷い込んだりした物語では、クモはいつも凶悪なモンスターです。でも、こうして、必死に短い一生を終えるジョロウグモの姿をたまには、思い浮かべることにします。