明日、ママがいない

日本テレビで放映されている「明日、ママがいない」の番組が、賛否両論で話題になっているようです。

 

ドラマに出てくる「コガモの家」は、児童養護施設のなかのグループホームという少人数の施設を想定しています。

 

そもそも児童養護施設とは、「保護者のない児童、虐待されている児童など環境上養護を要する児童を入所させてこれを擁護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設」と児童福祉法で定義されています。

 

日本全国に約570の施設があり、入所児童数は約30,000人、平均年齢10.6歳、平均入所期間4.6年。職員は児童指導員や保育士が働いています。

 

さいたま市内にも3施設あります。私が保育園立ち上げの準備や保育士試験の勉強のために、さいたま市桜区の図書館をよく利用していたのですが、荒川沿いのサイクリングロードからその中の一つの施設で生活している子どもたちを見ていました。

 

以前は、「孤児院」と呼ばれていました。私が子どもの頃に夢中になったアニメの「タイガーマスク」の伊達直人が育った施設は「孤児院」という設定です。しかし、現在入所している児童のほとんどは孤児ではなく、親はいるが、養育不可能で預けられます。そして、今はその中の半数以上が虐待が原因というのが実態です。

 

児童養護施設の対象年齢は、原則1歳から18歳までです。ドラマに出てくる「オツボネ」というニックームの子が、あと1年で出ていかなくてはならないというのは、彼女が17歳の設定だからです。

 

よく養護学校(現在は特別支援学校という名称に変更)と間違える人がいますが、ホワイトきゃんばすの近くにある、養護学校のひまわり学園などとは違います。

 

私自身は、保育園にかかわっており、中学からの仲間の一人が、里親登録をしています。そして、かつては児童養護施設にいて、今は里親のもとで暮らす5歳男の子が、一時預かりでたまに登園しますので、児童養護施設のことを考える機会は多いです。

 

一時預かりの5歳男の子は、知的障害を持っています。生まれた時に障害があり親が育児を放棄したか、考えたくはないですが、ネグレクト(育児放棄の虐待)で、満足な食事も与えられず、脳に障害ができてしまったか・・・登園当時は複雑な想いで、彼を保育していましたが、今ではしっかりと歩き、自分の名前を理解し、食事も一人で食べられるようになりました。

 

里親である今のママパパと姉が、懸命に「生きる力」を与えてくれた賜物と思っています。

 

さて、「明日、ママがいない」のドラマについてですが・・・

 

大人の方へ・・・これはテレビドラマのフィクションです。どうしても視聴率を取らねばならないので、非現実的な描写となることを理解したうえでこのドラマを見る必要があると思います。児童養護施設に働く人からも賛否があり、「こんなひどいことは、実際の施設ではやっていないし、職員は優しい」と批判する人もいれば、「このドラマを機に、今まで児童養護施設を知らなかった人たちへ、正しい認識をもってもらい、現実の30,000人の子どもたちへ、心の支援でいいから考えてもらいたい」と言う人もいます。私も、後者の意見です。

 

そして、報道されている施設の子どもたちへのいじめ・・・小学校で、ポスト(ドラマの主人公のニックネーム)とあだ名をつけられ「お前もいつかはどこかにもらわれるんだ~」と言われるようなことについて・・・

 

ホワイトきゃんばすでは、子どもたちへ「生きる力」をつけさせるのが目標の一つです。実際、私が子どもの頃は、とんでもないあだ名をつけたり、いじめもたくさんありました。今回、施設の子どもが受けたいじめについても、この子たちが大人になる過程で、多かれ少なかれ、自分の生い立ちにかかわる辛く、苦しい機会が必ずあります。でも、それを乗り越えないと、強く生きることはできないでしょう。

 

いじめにあった子どもたちに、かかわる先生たちが、オブラードに包んで保護するだけでなく、励まし、「生きる力」を子ども自らの力で養っていけるように支援してもらいたいと考えます。

 

私自身は、保育園の子どもたちと接する中で、子どもたち自身の強い心を日々感じています。そんな子どもたちの「生きる力」をずっと信じていきます。